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「需要高まる有料ライブ配信サービス」7社を徹底比較 【実際に配信したアーティストと参加した感想つき】



本記事は「有料型のライブ配信」を検討しているアーティスト・ミュージシャンの方へ向けた、配信サービスの比較記事となっています。


新型コロナウイルスの影響により、多くの観客の前で演奏することができないアーティストたち。そんな中、今続々と増えているのが「有料型のライブ配信」です。視聴者は、事前にクレジット決済など支払いを済ませ、当日の配信時間に指定URLをクリックすることで配信ページに入ることができる、というのが一般的です。 YoutubeやInstagramなどでの無料配信も多く見かけますが、有観客ライブが難しい今、アーティストたちの新たなライブの届け方、そしてビジネスのあり方として「有料型のライブ配信」は、これから一層注目されることになりそうです。



【大手プレイガイド2社が提供するライブ配信サービス】


「Streaming+」(ストリーミングプラス):イープラス




チケット販売でもよく知られるイープラスが開始したサービスが「Streaming+」。馴染みのあるいつもの販売ページからチケットが購入できるため視聴者も簡単に購入ができ、1300万人を超える会員を抱えるからこそのプロモーションをおまかせできるのもメリット。配信についてもセルフ~トータルサポートと3つのプランが用意されています。

出典:e+サイトより


【料金】販売手数料(配信システム使用料込):8%+システム使用料220円/1枚 or 15% 【配信プラットフォーム】Vimeo

(7月以降の独自サービスはAWS Elemental MediaLiveを使用) 【主な利用アーティスト】  iri(9月9日):チケット料金 3,000円  [Alexandros](配信終了):チケット料金 3,500円  スキマスイッチ(配信終了):チケット料金 4,000円  サカナクション(配信終了):チケット料金 4,000円




「PIA LIVE STREAM」(ぴあライブストリーム):ぴあ







こちらもチケット販売で有名なぴあ。2020年5月のサービス開始から約2か月で話題の大型公演なども含め、すでに100本以上のライブ配信が決定しているようです。特筆すべき点として、ぴあが会場手配、撮影から視聴チケット販売、プロモーション、配信までを一括でサポートしてくれるということ。ライブ配信に慣れていないという声に応えた結果のスタイルだそう。またチケットぴあのプラットフォームを最大限に活用、グッズ販売や投げ銭機能もつけられます。

出典:チケットぴあサイトより


【料金】要問合せ 【配信プラットフォーム】ULIZA、Vimeo 【主な利用アーティスト】 back number(9月22日):チケット料金 3,500円 Chara(9月22日):チケット料金 4,500円 UVERworld(9月25日):チケット料金 3,500円 aiko(10月17日):チケット料金 3,300円 銀杏BOYZ(配信終了):チケット料金 3,000円 Suchmos(配信終了):チケット料金 2,500円 サザンオールスターズ(配信終了):チケット料金 3,600円 JUJU(配信終了):チケット料金 3,300円

 

筆者は、先日のSuchmosのライブ配信を実際に鑑賞しました。PIA LIVE STREAMでの配信を見るのは初めてでしたが、PCに繋いだイヤホンから流れる音はとても良く、本当に素敵なライブでした。音が良いと、配信であってもライブに入り込めるなと感じました。 今回のSuchmosが、最近多く行われているライブ配信と大きく異なった点は“アーカイブなしの一発勝負”だったということではないでしょうか。皆さんご存知だと思いますが、アーカイブなしというのは、ライブ終了後にもう一度見直すことができないということです。その時間、リアルタイムでしか見ることができないという特別感が得られます。 けれど万が一、視聴者のネット環境が悪く止まってしまったとしても、後から見直せないので悔しい思いをする人もいるはずです。筆者もこの理由で、途中1曲分が見られませんでした。Twitterをチェックしても同じことが起きている人はいなかったので、単に筆者宅のネット環境の問題のようでした。アーカイブに関して言えば、あったら良かったな、というのが率直な感想でした。 とはいえ、一言でいえば最高なライブでした。同じ空間を共有してのライブ体験はまだまだ先になりそうですが、配信でも十分楽しめることがわかった時間でした。

 


【音楽業界からはこちらのライブ配信サービスが開始】


「Stagecrowd」(ステージクラウド):ソニー・ミュージックソリューションズ





ソニーミュージックがスタートした映像配信サービスは「Stagecrowd」。ソニーミュージックレーベルズ所属のアーティストにとどまらず、他社所属アーティストを含めた配信サービスを展開していくとしています。サービスの特徴として挙げられているのが、アーティストごとのオリジナル性の高い配信サイトの構築や、ステージ制作・運営・グッズ制作等幅広く対応できるといった点など。

出典:Stagecrowdサイトより


【料金】要問合せ 【配信プラットフォーム】大規模ライブ配信でも安心な、安定した高品質動画を配信できるプラットフォームを使用との記載あり 【主な利用アーティスト】 King Gnu(配信終了):チケット料金 3,500円 SUPER BEAVER(配信終了):チケット料金 3,000円

 

8月30日に配信されたKing Gnuの有料配信ライブを実際に鑑賞しました。こちらは生配信ではなく、事前収録されたものを配信するかたちでした。アーカイブも配信後3日間視聴が可能。生配信ではない場合のメリットとしては、やはり配信時間に縛られないということでしょうか。 そして内容は本当に素晴らしかったです。しっかり編集されているので、映像も音もとにかく良かったです。事前収録といえど、ライブの臨場感をすごく感じました。配信側からすると、こだわったカメラワークでライブ配信できるのも事前収録の良さのひとつなのかもしれません。 今回の配信、ライブ自体は事前収録でしたが、当日配信後にメンバーがライブ映像を観ながらするトークを生配信という、ファンには嬉しいものが用意されていました。こちらはライブ配信を購入した人だけが追加購入できるというかたちでした。 これまでは配信なら生のライブでなきゃと思っていましたが、今回のKing Gnuのライブ配信を観て、あまりにも素晴らしい映像・音に、収録での配信の良さを物凄く感じました。観る側として、ネットが多少不安定でも気持ちの余裕が持てるのもポイントでした。

 

「Thumva」(サムバ):フェイス





新感覚ライブ配信サービスとしてリリースされたのが「Thumva」。他のサービスでみられない特徴として、最大8人のオンライングループ視聴ができる点が挙げられます。グループコードを共有することでグループビデオ通話やチャットが可能で、離れた友人とともにライブを楽しむことができます。またギフティング機能の搭載、ライブ配信後に特定のギフティングをしたユーザーに対してメッセージや動画などを送信することもできるようです。

出典:Thumvaサイトより


【料金】要問合せ 【配信プラットフォーム】検索しましたが不明 【主な利用アーティスト】 KREVA主催フェス(9月8日):チケット料金 5,408円 [Alexandros](配信終了):チケット料金 3,000円 THE ALFEE(配信終了):チケット料金 4,000円 KREVA(配信終了):チケット料金 2,908円 OKAMOTO'S(配信終了):チケット料金 3,300円




【ライブ配信サービスの先駆け】


「ZAIKO LIVE」(ザイコライブ):ZAIKO










新型コロナウイルスが拡大し始めた3月に、ceroが初の試みとして、電子チケット制の有料ライブを配信し話題になったのが「ZAIKO」。まだほとんどのアーティストが有料でのライブ配信を行っていないなかでの、先駆けといったイメージがあります。

以前は配信のプラットフォームとして、外部サービスのVimeoを利用しサービス提供していましたが、現在は完全自社開発のオリジナル動画配信サービスをリリースしています。そのため、配信者が外部配信サービスへ費用を払うことなく、コンテンツの販売配信ができるようになりました。

出典:ZAIKOストリーミングサイトより


【料金】販売手数料(配信システム使用料込):10%+50円 or 0%(チケット1枚に220円上乗せ) 【配信プラットフォーム】ZAIKO LIVE、Vimeo 【主な利用アーティスト】 flumpool(配信終了):チケット料金 3,000円 星野源(配信終了)::チケット料金 3,500円 森山直太朗(配信終了):チケット料金 3,000円

 

7月12日に配信された星野源のライブでは、アクセス集中によるサーバー負荷のためログインできない、途切れてしまったりと、視聴できなかった方もいるようでした。対応としてはアーカイブ期間の延長、当日急遽のアンコール放送も行ったようです。また6月にもサーバートラブルにより、SIRUPの配信が当日中止、翌日収録映像の配信になってしまうことがありました。今後の対策として、サーバー強化による安定的なネットワークの構築、エンジニアのリソース拡充等を挙げていました。

 


【日本トップクラスのシェアを誇るラインのライブ配信サービス】


「LINE LIVE-VIEWING」(ラインライブビューイング):LINE







LINEが8月4日にサービスを開始した、有料オンラインライブ「LINE LIVE-VIEWING」。LINEとの連携により6,400万人へアプローチが可能、今後は海外へ向けたチケット販売も予定しているといいます。チケット購入から事前通知による販売促進配信・配信・課金まで一元化、ブラウザ(スマホ・PC)の高画質配信(横型・縦型)にも対応。また、イベント当日の朝にLINE公式アカウントを通じてプッシュ通知を送ったりなど、LINEの各サービスと連携したプロモーションにより、ライブ視聴を促進・拡散することも可能となり、多くの利用者を抱えるLINEならではの大きな強みとなりそうです。

出典:LINE LIVE-VIEWINGサイトより

【料金】要問合せ 【主な利用アーティスト】 Official髭男dism(9月26日):チケット料金 2,420円 SKE48(10月4日):チケット料金 2,220円 矢沢永吉(配信終了):チケット料金 3,800円 MISIA(配信終了):チケット料金 4,000円




業界史上最高レベルの音質を実現


「MUSIC/SLASH」(ミュージックスラッシュ):SPOON











業界史上最高レベルの音質(AAC-LC 384kbps)を実現したライブ配信サービスが「MUSIC/SLASH」。一般的なオンライン配信だと96~194kbpsがほとんどのなかで優に超えていることが分かります。特徴として、初期費用¥0から配信可能とされています。チケットの売上から配信にかかる費用や出演費、会場費などライブ制作費が補填されるようになっており、あらかじめ決められたチケット数を販売できれば「MUSIC/SLASH」に支払う費用が実質負担¥0になるという仕組み。また著作権申請のサポートがある点も配信側にとっては大きなプラスポイントではないでしょうか。

12月には更なる高音質、ハイレゾ音声でストリーミング配信ができる「MUSIC/SLASH Premium」のサービスを開始予定。

音楽を愛し、音楽を本当に届けたい人、届けて欲しいと願う人に、音楽を最高の品質で提供する動画配信サービスとしている「MUSIC/SLASH」。今後注目の配信サービスのひとつとなりそうです。

出典:MUSIC/SLASHサイトより


【料金】要問合せ 【主な利用アーティスト】 藤井風(10月29日):チケット料金 未発表 山下達郎(配信終了):チケット料金 4,500円




【イベントサポートサービスPeatixからも】


「Peatix Live」(ピーティックスライブ):Peatix









グループ・イベント管理、チケット販売などで知られるPeatixからも、2020年8月より「Peatix Live」の提供が開始されることになりました。Peatixはこれまで、イベントページ作成、参加者管理、集客機能を備えていましたが、Peatix Liveの提供により、オンラインイベントの告知・集客・配信までをサポートするワンストップサービスとして利用が可能になったとのこと。特徴としては、アンケートフォームを活用してチケット購入者の顧客情報を得ることでマーケティングデータを取得できる点や、日本語だけでなく英語・中国語に対応したサービスプラットフォームとカスタマーサポートが提供される点など。また国内だけでなく海外からのイベント視聴も可能としています。

出典:Peatix Liveサイトより


7月15日の時点で手数料を問い合わせてみました。正式決定ではないようですが、8月のサービス開始初期については下記の金額で予定しているとのことでした。 ●固定費なし ●6.0% + 150円/1枚




【ライブ配信のメリット・デメリットなどの考察】


ここ数ヶ月で、本当に数多くのライブ配信がされるようになったと思います。筆者も、無料・有料問わずたくさんの配信を楽しんでいます。 まずメリットとしては、ネットさえ繋がっていれば好きな場所からライブを視聴することができる点です。自宅でお酒を飲みながら、ベッドの上でリラックスしながら。それぞれの心地よい空間でライブを楽しめるのは魅力的ですよね。また、小さな子供がいて出掛けることが難しいお母さんであったり、東京中心のライブであれば遠くに住んでいる方であったり、そういった様々な方に届けられることは、配信だからこそできることだと思います。 もう一つメリットを挙げるとすれば、リアルのライブに比べチケット料金が安価であるため、気軽に視聴しやすいという点。これまで気になっていたけれど、ライブに足を運ぶのは大変・・と思っていたアーティストのライブも「この機会に見てみよう」という気持ちにさせてくれます。ファンの新規開拓という視点でみても、ライブ配信は大きな役割を果たすことになりそうです。あとは単純に、視聴者数制限が基本的にないので、チケット当選するのが難しいアーティストのパフォーマンスも見ることができますね。 デメリットとしてはやはり通信環境でしょうか。ZAIKOでもサーバートラブルなどがあったと記載しましたが、配信者側でなく視聴者側の理由で見られないというトラブルも発生する可能性が高いと思います。生ライブ配信であった場合、リアルタイムでその瞬間を共有することは視聴者の求めていることでもありますし、アーティストもその瞬間のために作り上げてきたものがあるはずです。“アーカイブがあるから”と簡単に済む問題ではないと思います。視聴者側の通信環境トラブルであれば、やはり自己責任という感じがしてしまいますが、配信者側はそうはいかないですよね。 アーティストによっては、一つのライブでも数種類の配信サービスを利用し、その中から視聴者がどの配信サービスのチケットを購入するかを選べるスタイルもあります。いくつかの配信サービスを利用することで、サーバー負担などを減らせるのかもしれません。 ライブ配信という音楽ビジネスが加速し、様々な配信サービスがリリースされるようになりました。これまではサービス自体が少なく、限られた中での選択だったかもしれませんが、これからはアーティストが自ら選んでいくようになりそうです。視聴者となる私たちも、またリアルのライブを存分に楽しめる日がくるまで、配信ライブでアーティストを応援していきたいですね。

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